温かい愛の中で



「…ろ…千宙!ちーひーろ!!」

お母さんの声で私はハッとする。

「どうしたのよ。ボーッとして。」

お母さんが心配そうに私を見る。

「え?ちょっと考え事してただけ。」

そう答えて再びテレビに目を向ける。
げっ、もうこんな時間!あと5分で準備しなきゃ間に合わないじゃん。

「ごちそうさま!」

一口だけ味噌汁を飲んで席を立つ。
鞄に弁当と水筒を入れ急いで靴を履く。

「やっぱり、何かあったのね。」

え?何かって何?何があったの?
その何かをこっちが知りたい。

「何もないけど。何で?」

急いでるのに話しかけてくるお母さんに少しだけ苛立ちながら返事をする。

「だった先週の土、日はずっと家にいたでしょ?いつもなら友達と遊びに行くのに。ケンカでもしたの?」

は?なにそれ?意味わかんない。
休みの日は友達と出かけなきゃケンカしたことになるの?

「何もない。何もないよ!」

意味のわかんないお母さんの発言に私は大声で答えた。

「…行ってきます。」

乱暴にドアを開けて家を出た。