温かい愛の中で



一瞬早川が振り返る。

でもすぐに元の方を向いて気づかないフリをする。

イヤホンをして現実から逃げる。

俺は少しの間それを見ていた。


何の音もしない静かな屋上。


俺は早川の方へ歩いていき、後ろからイヤホンを取った。

「な!?」

早川は驚いた顔で俺を見上げる。

イヤホンを取り返そうとする。


──俺は早川に抱きついた。


そうしないと、消えてしまいそうだったから。


「てめ、何やっ…」


「…辛かったな。寂しかったな。我慢なんか…する必要無いんだ。泣きたい時に泣けばいい。」


俺の声はこいつだけに届けばいい。