温かい愛の中で



───帰るのも学校に残るのも嫌。

「どうしようかな…。」

部活もバイトもしてないからな…。
本屋にでも行こうかな。
そうしよ。

教室から出ると他の教室の前に花乃が立っているのが見えた。

私は何故かいつも使う北側の階段じゃなく、花乃の前を通らない南側の階段の方に向かって歩いていた。


学校から1番近い本屋へ向かう。

道路には雨でできた水たまりがいくつもあった。

駅前の本屋が1番近い。
駅までは歩いて10分ぐらいで何回か曲がってまっすぐ行ったところにある。

そして最後の曲がり角を曲がった時──

──ドンッパシャ

冷たっ!

走ってきた人にぶつかって私のお尻は見事水たまりにドボン。

最悪。
何なんだよ、もう!

「すいません。大丈夫ですか?」

顔を上げると私と同じ制服を着た男子が立っていた。
その男子は手を差し伸べてきたけど私は手を借りずに立った。

ジャバジャバジャバ

水たまりの水をたっぷり含んだ私のスカートから大量の水が落ちた。

最悪。
これじゃ本屋行けないじゃん。

「本当にすいませんでした。」

「あぁ、もういいですよ。」

それじゃぁと私は目を合わさずに言い歩き出した。

濡れたまま帰んのは嫌だし、適当に服買って帰ろう。


私はすぐそばまで迫っている「崩壊」を知る由もなかった。