────キーンコーンカーンコーン


「お授業終わったな。そろそろ教室行くか?」

「はい。」

「1人で行けるか?」

「はい。それじゃ、ありがとうございました。」

「おう。頑張れよ。」

「ありがとうございます。」

雨で濡れた髪を拭きながら廊下を歩いていて教室に向かう。
授業中とは違って廊下にはたくさんの人がいて賑やかだった。

教室はドアが開いていて女子が円をつくって喋っているのが見えた。

「あ!千宙!」

花乃(かの)が大声で言いながら真維(まい)と梓桜(あずさ)と駆け寄ってきた。

「どうしたの!?遅刻なんて珍しいじゃん。大丈夫?ビショビショじゃん。」

「大丈夫だよ。タオルも貸してもらったし。」

「そう?なんかあったら言ってね。あ、そうだ昨日ね、梓桜と真維とね遊園地行ったんだぁ!」

昨日…。

「でねでね、3人でお揃いのストラップ買ったんだよぉ。」

3人はケータイにつけたストラップを見せる。

「かわいいでしょ。」

真維が笑いながら言う。

「うん、かわいい!」

「千宙も誘ったほうがいいかなぁって思ったんだけど…。」

梓桜が申し訳なさそうな顔で私を見る。

「全然!気にしないで!」


──『私も行きたかった。次は誘って。』
なんでそんなに短い文章を私は言えないんだ
ろう。