すれ違っただけで甘く切ない感情が心を過ぎった。


押し上げてくる涙を抑えて、右手で目を拭う。
不安の中、ゆっくり歩きながら、ふと、空を見上げた。


空は橙色、いろいろな姿をした姿をした雲がゆっくりと風に乗って動いた。
鳥の群れを成して北に向かっている。


少しだけ不安は無くなり、笑顔になった。
いつもの帰り道を歩いた。


坂を下り10分め歩くと野原に出た。
そんなに遠くない場所から動物の鳴き声が聞こえる。


雪はなんとなく、その鳴き声の場所に足を運んだ。
大きな段ボールの箱の中に子犬が一匹、寂しそうに泣いている。
子犬は、雪の姿を見て寂しそうに吠えた。


「ワン・・・!ワン!ワンッ!」


雪は一瞬焦った。この場所に来てはいけなかったのだ。今この子を飼う余裕などあるはずもなかったからだ。


少し後悔した。しかし、子犬は本当に可愛かった。雪の心の中の冷たくなっていたものが徐々に暖かくなっていく。