あたしに笑顔をくれたのはあなたでした

「愛梨・・・?やっぱりまだ無理?」

体育館の中からはシューズと床のこすれる懐かしい音がした。

バスケの掛け声も聞こえてきたから今日はバスケ部と一緒かと思った。

あたしが何も答えないでいると栞奈は続けて
「無理やり連れてきちゃってごめん。でも、愛梨がいないとまともに練習ができないの!」
と一息で言った。

ここまであたしを必要としてくれてありがとぉという気持ちと同時にごめんという気持ちが胸いっぱいに広がって息苦しかった気がした。

あたしも前に進まなきゃいけない、そろそろ大丈夫と心の中でつぶやいた。

「・・・ごめんね、それとありがとぉ。あたしは大丈夫だよ。強いんだからね~!」

あたし、ちゃんと笑えてるかな?

うん、大丈夫。

心の中で自分に言い聞かせるように何度も何度も唱えていた。

あたしが部活に行きたくなくなった理由・・・。

それはあの出来事があったからだ。

あなたにとってはなんともないことかもしれない・・・。

でも、あたしにとっては心の中を鋭い刃物でえぐられたような痛みが残ってる。

ヒビをいれたのは誰?

ヒビをいれたのは何?