あたしに笑顔をくれたのはあなたでした


そこに立っていたのは同じバド部の川上栞奈(かわかみかんな)だった。

そう、あたしはバド部に所属している。

小学校からバドをやっていて、大好きなんだ。

栞奈とは中学の頃からダブルスを組んでる。

栞奈は最高のペアだと思ってる。

「今日こそは顔だしてよね!」

耳が痛くなるほど大きな声で言われて思わず顔をしかめてしまった。

「あ~、はいはい。気が向いたら行くかもね~。」

「その台詞聞き飽きた。今日という今日は絶対連れて行くから!」

「でも、今日は葵たちと・・・「問答無用!」

あたしの用事はその一言でなかったことにされた。

そして教室の中を見渡して葵たちを探し出すと
聞こえるように声を大きくしながら
「今日は部活いかなきゃいけないから3人で楽しんできて~」
と言って教室を出た。




あたしたちは今バド部の練習場である体育館に向かってる。

といってもあたしは栞奈にほぼひきずられてるって言った方が正しいかも・・・

栞奈の真っ黒の癖のないストレートのサイドに結ばれた髪が揺れている。

「はぁ~、栞奈は黙ってれば可愛いのに・・・。」

「何?なんか言った?」

「ひっ・・・・。何も言ってないよ~。にゃははっ。あ、今日はとっても天気がいいね    っ!!」

あたしは自分でもあきれてしまうくらい苦し紛れの言い逃れをした。

「愛梨・・・外雨降りそうだけど。まぁいいや、ほら、もう体育館だよ。」

なんとか栞奈は問い詰めてこずに済んだからよかったと思いながら
あたしの足はそこで無意識に止まってしまった。