現に、聞こえてきた会話はこうだ。


「ほんと、いつ見ても可愛いすぎるよ。愛菜ちゃんに会うためだけに生きているようなものだよ、俺は。いやいや、冗談じゃなくさ」

「そんな……。でも嬉しいです、ありがとう」

「ああ、もう、可愛い!! よし、もっかい、じゃんけんだ。写真、絶対に撮ってみせるよ!勝たないと撮らせてもらえないからな!」

「えへへ。頑張れ~」


と。

じゃんけんに勝たないと個人的に写真を撮れないシステムなのだろう、そのお客さんは腕まくりをし、愛菜がわざと負けるまで5回ほど、有料とおぼしきサービスにつぎ込んでいた。

そうして勝ったお客さんは、近くの娘を呼び、ツーショットの写真を携帯で撮ってもらう。

顔は満足そのもので、何度も携帯と愛菜本人を見比べては「やっぱり本人は万倍可愛い!!」と、取り憑かれたように呟いていた。


「すごい人気だね、葉司君」

「あはは。そうみたいね。ああ、複雑……」


さすがの奈々も、実際のオトコの娘カフェを知って、若干、異空間だと感じはじめてきたようで、言葉数が減ってきている。

だから何度も言っていたのだよ、あたしは。

まあ、元気そうだから何よりだけれど。