「お嬢さま方は、初めてなの?」

「そうなんですよ。この子、ナナミっていうんですけど、田舎から遊びに来てて。オトコの娘カフェって有名じゃないですか。行きたい、行きたい、言うもので、連れてきたんです」

「まあ、そうだったの!嬉しいわ。あ、これ、メニューね。どうぞごゆっくり~」


練習通り、ナナミに扮した奈々を紹介しながらヨイショも交えて言うと、気をよくしたメイドはニコニコ笑ってメニュー表を置いていく。

あたしたちは、一緒にメニューを見るふりをして額を寄せ、ニシシ……と笑いあう。

まずは、潜入成功だ。


昨夜のこと。

だいぶ酔っぱらってはいたけれど、さすがに探偵みたいな格好では逆に怪しまれてしまう、という判断力は残っていて、メイクや服装を入れ替え、“変装”と見なすことにしたのだ。


あたしは奈々がいつもしているようなメイクをし、奈々はまるでスッピンな極薄メイク。

服装も、お洒落さんと普通さん、と入れ替えれば、奈々は素朴さが全面に出てきて、あたしは都会っ子に見えるから、あら不思議。

ここへ来る前も鏡の前で最終チェックをして、「よし、バレない」と頷きあったのだった。