こういうところが変に小心者なのだ。

それを奈々は分かっていて、あたしが断れないようにまずは変装グッズを用意し、周りから固めていった、と、そう見て間違いない。


「どう? つき合うよ?」


パーチーメガネを掛けた、なんともマヌケな顔の奈々が、不安そうな声を装い、聞いてくる。

あたしはそれに小さくため息をつくと、ずり下がったメガネを外し、諦め口調で言う。


「……いや、奈々。あなた、一番はじめにオトコの娘カフェに行きたいって言ったじゃないの。あたしの性格だって分かってるくせに、よくもまあ、つき合うよ? なんて言えるよね」

「うへへ。だから好きよ、マコ」

「笑い声がお代官様だよ、奈々。……まあ、本音を言うと、葉司がちゃんと元気でやってるか心配だし、会いたい人もいるしね。がっぽり謀られたけど、誘ってくれてありがと」


会いたい人、というのは、メルさんだった。

あたしたちのためにいろいろと骨を折ってくれたのに、こんな形で別れてしまって、メルさんにはすごく申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

葉司から話は聞いて、すでに知っているとは思うけれど、こんな機会でもなければ会えないだろうし、あたしの口からも、今までのお礼と謝罪をきちんと伝えておきたい。