かく言うあたしもパーチーメガネゆえ、説得力の欠片もないのだけれど、真面目なトーンで言うと、奈々は意外にも素直に納得してくれた。

ほっと一息だ。

それはそうと、奈々はなぜ、今さらオトコの娘カフェに行きたいのだろうか。

その理由を詳しく聞いてみると。


「だってマコは、葉司君に連れられて行ったんでしょう? 羨ましいじゃないの」


ということらしく、加えてこうも言う。


「それに、別れたは別れたけど、マコ、ずっと葉司君のことを気にしてるじゃない。純平だけじゃ頼りないし、気になるならいっそ、変装してこっそり様子を見たらいいと思うのよ」

「それで、この変装グッズ?」

「うん。親友だもの、マコ1人では行かせられませんわよ。つき合う!てか、お願い!一目だけでも拝ませてよ、葉司君のオトコの娘」

「奈々は自分の好奇心を満たすためなら何でもするね……。ある意味、尊敬する」


結局は、自分が“オトコの娘”を見たいがためのお泊まり計画と、パーチーメガネをはじめとする変装グッズの山、というわけだ。

これらをどこで手に入れたのかは、あえて聞かないけれど、ここまで用意してもらって断るのも、なかなかどうして、気が引けてしまう。