感想を述べるなら……。
「……か、可愛い」
思わず声に出てしまったけれど、まさにこれ。
あたしが現役の女子高生だったときとは月とすっぽん……いや、ミジンコと宇宙くらい違う。
「可愛い!? ほんと!? 本物の女の子から見てメイクとか服とか変じゃない?」
「じゃない、じゃない」
とたんに目を輝かせて矢継ぎ早に質問する葉司にドン引きしつつも答えると、彼はやや膨らみのある胸に手を置いて「よかったぁ」と言う。
容姿もそうなのだけれど、その仕草とたるや、本物の女の子以上に女の子。
あたしはさらにドン引きし、どうにか笑顔を作ろうとすればするほど、自分でも顔の筋肉が引きつっているのを感じて困惑した。
けれど。
ちょっとワンブレイクしてみようか、まこと、と自分を落ち着かせてみる。
「分かった!“オトコの娘"ってあれでしょ、学園祭でやるサッカー部の出し物だ!みんなで女装して、カフェとかやるんだよね?」
そうそう、この線があったではないか。
だったら話は簡単、葉司もあそこまで深刻な顔でカミングアウトすることもなかったはずだ。
あたしだって女装した葉司にドン引きしたから大きな声では言えないけれど、学園祭の出し物で女装するとなれば、ちゃんとした目的もあることだし、彼女として彼氏に力も貸せよう。


