「俺のほうこそ、ありがとう」

「……」


振り向いたあたしに葉司はそう言い、今までに見たどの葉司よりも、優しく微笑んだ。


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「……いらっしゃいませー」

「まことちゃん、目が死んでる。笑顔を張り付けるんだ、この俺のように!」

「うざい。近寄らないで」

「またまたぁ。まことちゃんってば、ほんっと照れ屋さんなんだから。うざい、近寄らないでは、俺にとって最高の告白だよっ!」

「……」


そして、最悪なことに、今日はバイトの日。

あたしは部屋の近くのレンタルビデオ店でバイトをしているのだけれど、さらに最悪なことに一緒にシフトに入っているのが茨城先輩。

この通りの、かなり残念な人だ。


「あっ、返却ですね。お預かりします」


そんなうざすぎる先輩を全身全霊で拒絶していると、タイミングよくお客さんがカウンター前にやってきて、あたしはそれを受け取った。

返却業務は、袋の中身を確認する、という至ってシンプルな作業なのだけれど、少しの間だけでも先輩から離れられるため、率先してやる。

そうして中身を見てみると。


「……っ」


思わず、手が止まってしまった。