そう言って、あたしはカフェを飛び出す。
葉司が、まるで巧みな話術で犯人に罪を認めさせる誘導尋問のようにあたしの口から出させた言葉は、別れる、という選択肢だった。
「ほんっと、葉司はアレだ!」
走って、走って、走って。
息も絶え絶えになったところで、ようやく足を止めたあたしは、涙と鼻水が横に流れているのをゴシゴシと腕で拭くと、空に叫んだ。
葉司はいつだってレディファーストだったのだけれど、あんなの、全然そうじゃないっ!
あたしはまだ、全てにおいて「分からない」としか言いようがなく、これから、もっともっと考えて、悩んで、あたしなりの“葉司とのこと”を1つずつ選択していくつもりでいたのだ。
けれど葉司は、あたしの選択待ち、という、いつまでも宙ぶらりんなまま、形だけの恋人を続けていくのは嫌だったのかもしれない。
……体のまん中に、いつもブラブラと下げているものがあるというのに、おかしな話だ。
それはさておき。
もしも葉司が、そうしてさらに悩むことになるあたしを楽にさせてあげたい、との思いから、言葉巧みに「さようなら」と言わせたのだとしたら、余計なお世話だと言ってやりたい。


