だいたい、“俺は俺”ってなんなのさ。
もしかしたら心はとっくに女の子かもしれない葉司を、そっくりそのまま、今までと同じように“葉司”だと思ってほしい、そういうこと!?
しかも、その“本物の女の子化疑惑”を焚き付けたのは、何を隠そう、あたしときたもんだ。
泣きたい。
猛烈に泣きたい。
そして、時間よ戻れ。
「俺ね、マコになら、何を言われたって、ちゃんと受け止める覚悟があるよ。オトコの娘を打ち明けようって決めたとき、その覚悟も一緒にしたんだ。マコが言いたいことは分かってる」
「それ、どういう意味よ」
「大丈夫、マコは間違ってない」
「……、……」
けれど、どんなに念力を送ったところで時間が戻るわけはなく、静かに審判が下るときを待つ葉司は、妙に落ち着き払った顔をし、何やら含みのある言葉を選んで言った。
葉司の覚悟とは、おそらく“オトコの娘をやめてほしい”と言われることではないはずだ。
あたしがそれを言わず、距離を置きたいと申し出たり、こうして深い話をしたいと呼び出したりすることも、たぶん葉司は分かっている。
つまりは……。
「葉司って、けっこうアレだよね。分かった、言う。今までありがとう、さようなら」


