オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*

 
それはそうと、確かに、産まれてまだ3日の超新生児に「死んでも守れ」は、葉司にとってはさぞかし苦痛だったことだろう。

おまけに思春期にはプライベートなことまで干渉されて、楽しいはずの高校生活を十分エンジョイできなかったとくれば、あたしだったらとっくにグレていたかもしれない。

グレなかっただけ、マシだと思おう。


「あれ、でも、お母さんは? 妹さんたちと違う扱いをされる葉司を見ても何も言わなかったんでしょうか? それとも、お父さんと同じ教育方針だったんでしょうか」

「……一番下の妹さんを産んでまもなく、体調を崩して旅立たれたそうよ」

「そう、でしたか……」

「ええ。小学校に上がる年だったとかで、その頃からお父さまは、以前にも増して厳しく愛菜を躾るようになったんですって」

「……」


なんとも胸が苦しい話だ。

すぐには言葉が出てこない。

けれどこれで、なぜ葉司がオトコの娘化したのか分かったような気がしたし、葉司とつき合ってきた1年間、どこまでもあたしを大切に扱ってくれかのか理解もできた。

いつもたいてい、のほほんとしている葉司なのだけれど、その裏では、込み入った家庭の事情と“オトコの娘”をうち明けるべきかという葛藤で押しつぶされそうだったのかもしれない。