その4。
そんなとき、ぷつりと切れたのだそうだ。
“そうだ!女の子になろう!”
そうして、“そうだ、京都へ行こう”みたいなノリで、家族の目を盗んではじめたのが“オトコの娘”というわけで、今に至っている。
「要は、お父さまへの反発なのよ」
オトコの娘化の全容を語り終わると、メルさんは小さく息を吐き、最後にそう締めくくった。
あたしも一気に体の力が抜け、ソファーの背もたれに深く背中を預けて、豪華なシャンデリアを見上げながらため息をつく。
「し、知らなかった……」
「愛菜はたぶん、そういった家庭の事情を、まことちゃんには言いたくなかったのね」
「どうして?」
「プライドに決まっているじゃない。さっき言ったでしょ? あの娘、本来はちゃんと“ストレート”な男の子なんだもの。あなたに余計な心配をかけたくなかったのよ」
「はあ……」
さっきから出てきているけれど、メルさんの言う“ちゃんとストレートな男の子”というのは、心も体も男の子、という意味だろうと思う。
ただ“オトコの娘”の一面を持っているだけ、ほかは普通の男の子と一緒、そういうことだ。
やっと分かった……。


