「……マコ、お待たせ」
そうして待たされること、18分。
何かガサゴソとやっている音は聞こえたのだけれど、なんだか怖くて見に行けなかったあたしは、壁掛け時計と見つめ合ってしまった。
「けっこう急いだから、あんまり綺麗にできなかったんだけど、こっち向いてくれる?」
横目にちらりと入る、腰から膝のあたりにかけてがふんわりしている葉司のシルエット。
それと、男の子の口からはあまり聞かれないと思われる“綺麗"という単語に身がすくむ。
こっち向いてと言われても、見たら後戻りができなくなるような気がビシバシして、あたしはしばらく時計と見つめ合ったままだった。
けれど、聞こえないふりはできないし、このまま放置プレイしておくわけにもいかない。
葉司は“フツー"すぎるくらい“フツー"なあたしを好きになってくれた初めての男の子で、ほかの女の子には代えられない、と言ってくれた、いわばあたしの王子様なのだ。
少々シルエットや使った単語が引っかかるからといって、王子様がこっちを向いてほしいとおっしゃれば、向くのがセオリーというもの。
「……ねぇ、マコ?」
「はいっ!」
葉司が話しかけてきたタイミングで、女は度胸だと覚悟を決め、えいっ!と顔を向ける。
が……。


