何回もエッチしているんだもの、当然といえば当然だし、改めて言うことじゃなくない?

葉司のカラダのことやオトコノコ具合は、彼女であるあたしがよく知っている。

ただ、葉司とあたしとの間にはなんとも形容しがたいビミョー……な空気が漂っていて、お互いに“あれ、なんかおかしい"と思いはじめていることだけは、この空気が教えていた。


すると。

実際に書いたほうが話が早いと思ったらしい葉司は、自分のバッグの中からルーズリーフとペンケースを取り出し、太いマジックを握ると、紙のまん中あたりに大きくこう書いた。

【オトコの娘】

と。


「あれれ、子が娘になってるよ?」

「うん、そうなんだ。でも間違ってない。俺の場合はこれで正しいの。あ、ちょっと待って。実物を見せたほうが分かりやすいはずだから」

「……う、うん」


あたしの返事を聞くやいなや、葉司は席を立って彼専用のクローゼットへ向かう。

なんだろう。

今さらなのだけれど、葉司が意を決してカミングアウトしてきた気持ちがなんとなく分かってきて、サーッと引いていく酔いと奇妙な胸のバクバク感がハンパないんですケド……。