……あれ。でもちょっと待って。


「ねえ純平、今“オトコの娘"って言った!?」


短い髪の毛を根元からつかまれ、頭をグワングワン揺さぶられて言葉も出ない純平を奈々から引きはがし、今度はあたしがその胸ぐらをねじり上げながら問いただす。

純平は確実に“オトコの娘"を知っている。

バスケ以外はとんと世間知らずでゴリラ……あ、ゴリラは余計か、な純平が“オトコの娘"の存在を知っているだなんて、まずありえない。

これは純平の身近な人物が教えたからにほかなく、その人物とは葉司なのかもしれない、という恐怖の方程式が成り立ってしまうのだ。


あたしのヒステリックじみた声で我に返ったらしい奈々は、ハッと目を見開き、口元を両手で覆うと、おそるおそる純平に目をやる。

その純平は頭を抱えて悶絶するも、やがて真っ赤に充血した目であたしを見るとこう言った。


「あれ。まことたちには、葉司がオトコの娘だって言ってなかったっけ? あいつ、高校のときからそうだよ。マジ可愛いよな!」

「……」

「……」


ゴリラのくせに星でも飛んできそうなウィンクをし、グッと親指まで立てる純平。

対するあたしたちは絶句だ。

葉司の“オトコの娘"は高校のときからだと!?

そんなの初耳じゃ!!!!