マスカラが取れないように、慎重に涙を拭いてもらっているのだけれど、果たして、一体いつになったら涙が落ち着いてくれることやら。

……シャンパンで乾杯をして、ケーキを頬張る、という一番の盛り上がりもこれからで、あとで記念写真を撮る予定だってあるというのに。

静まれ!あたしの涙!!

そうして、文字通り、涙ぐましい努力をしていると、茨城先輩が唐突に口を開いた。


「でも、あれだよね。普段、化粧をしないまことちゃんが化粧をすると、見慣れてないからかな、なんか、宝塚みたいでスゴいね!」

「……、……」

「……」


シーン……。

あたしを笑わせようと思ってのことだったのだろう、しかし、笑いが起こるどころか、店内は静まり返り、空気はピーンと張りつめる。

1年前より、だいぶウザさが取れた先輩は、それでも残念なところは相変わらずの残念なままで、どうやらその部分が、このおめでたい席でタイミング悪く出てしまったらしい。


「何それ、奈々のメイクが悪いってか!!」

「マコの昭和顔のせい!?」

「どんなマコでも可愛いよ!! 謝れっ!!」


あたし、奈々、愛菜の順で、これでもかと文句を言われた茨城先輩は、ほかのみんなからも一斉にヤジを入れられ、今にも消え入りそうだ。