オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*

 
ちょ、マジでヤバいかも……。

こみ上げてくる気持ち悪さに、思わずお腹と口に手をやり、嗚咽感に耐える耐える。


寝坊してしまって、何もお腹に入れていない状態だったため、体の芯に力が入らない。

おまけに、香水やら香りつき柔軟剤やらの匂いでムンムンとした車内は、反して窓は全て閉まっており、クーラーが稼働しているとは思うのだけれど、冷却が追いついていなかった。


「うっ……。降ります!すみません、降ります」


とうとう我慢ができなくなったあたしは、倒れたり、リバースする、という惨劇を招いてしまう前になんとか電車を降り、ヨタヨタとベンチまで歩き、新鮮な空気と、余裕を持って腰を下ろせる場所を、どうにかこうにか得る。

すると「あの~……」と控えめな感じで声をかけられ、うつろな目で見上げると、そこには、いかにも正義マンという雰囲気の男の子が立っていて、心配そうにあたしを見ていた。

これが、つき合ってすぐの頃、葉司に言われたあたしたちの出会いだったらしいのだけれど、いかんせん、気持ち悪さと戦っていた真っ最中のあたしには、それが葉司との出会いだったという記憶は、まるで残っていない。