オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*

 
すると野宮さんは、口もとにほのかな笑みを浮かべながら何やら意味深なことを言い、言い終わったあと、なぜかハッとして口をつぐむ。

けれど、あたしには野宮さんの言葉の半分も理解できていないようで、とりあえず「はあ……」と相づちを打ったものの、さっぱりだ。


この場合、あたしの大事な人というのは葉司のことなのだろうけれど、野宮さんが言う、メルさんを葉司に置き換えるだけで、そう易々と答えが出せるものなのだろうか。

いかんせん、メルさんに出会って間もない頃に別れてしまい、それでも葉司が大事な人なことには変わりはないのだけれど、あたしが出会ったメルさんは、すでに“メルさん”として絶対的に完成されていたのだ、葉司のこととは、どうも種類が違うように思えるのだけれど……。


「石田様は難しく考えすぎなのですよ。石田様を見ていて、私はずっと思っておりました。もっと楽に恋をしたらいいのに、と。そして今も思っております、楽しい恋をなさってほしい、と。恋は本来、楽しいものですよ」

「そう……ですかね」

「余計な事象を全て取っ払って、最後に残った気持ちを石田様が愛しいと思えれば、恋はおのずと、楽しくなってくるものです」

「うー、難しく言わないでくださいよ」

「ふふ」