「そう。ちょっと残念ね」
「ごめんなさい」
「ううん、いいのよ。まことちゃんがそう決めているなら、あたしが無理強いすることじゃないわ。何しろあたしは、強制は、するのもされるのも嫌いな、正真正銘のセレブよ。まことちゃんの好きにしたらいいと思うわ」
「あは。ありがとうございます」
そうして、すったもんだありつつもオベンキョとやらが終わると、ちょうど服を着終わったメルさんは「顔を完成させてくるわ」と言って、奥の化粧台のほうへ向かっていった。
その間、野宮さんが新しくコーヒーを淹れてくれ、今がチャンスだと思ったあたしは、メルさんの裸に気を取られて聞き逃してしまった、例の突破口のことを聞いてみることにした。
けれど野宮さんは、困った顔をしたあと、大きな体をめいいっぱい小さくしながら言うのだ。
「申し訳ございません、石田様。お嬢様の許可なくしては、私からは何も……」
「えー。野宮さんも聞いてたんでしょ? こっそり教えてくれたっていいじゃないですか」
「申し訳ございません。それより石田様、どうでしょう、一緒にラッピングをしませんか? チョコはもう固まっていますよ」
「……無理やりだな、おい」
と。


