あたしの予想では、メルさんはメルさんのまま出てきそうな気がしていたのだけれど、どちらかというと普通な登場の仕方に、多少なりとも残念に思ったことは、否定はできない。
だがしかし、シャワーを浴びてさっぱりしたメルさんもまた、それはそれで完成しているのだから、元が本当に美しいのだと思う。
「あー、出勤するの面倒くさい」
と、やや男性の声のトーンで独り言をもらすメルさんは、バスタオル一丁の姿だろうが、西洋のお人形さんのような金髪ウェーブのロングのカツラを取り、黒髪からシャワーの滴を滴らせていようが、孤高の美しさを誇っていた。
しかし、服を着てくれ!早く!!
すると……。
「あら。まことちゃんったら、あたしの裸に耳まで真っ赤になっちゃって。エッチね」
「……っ!!」
壁の下のほうに付いたチョコのしみを一心不乱に拭き取っていたあたしの横にすとんと腰を下ろしたメルさんがそう言い、あたしは思わず、声にならない悲鳴を上げてしまった。
バスタオルの中身!中身っ!!
パンツの上からバスタオルを巻いているわけはないのだ、ご丁寧にしゃがみやがって……っ!!
見えたらどうするのだ!あたしが困るよ!!


