あまり笑う印象がない野宮さんが含み笑いをするものだから、かえって予想がつけにくい。
しかも「そうでしたか……。あ、いやいや」と、残念がってみたり、かと思ったら首を振ってみたりと、野宮さんはなぜか歯切れが悪く、ますます、どっちだ? と思ってしまう。
まあ、それでも、あたしの中では、メルさんはすでに“メルさん”という1人の人間として成立しているし、どちらのメルさんで出てこようとも、メルさんには変わりはない。
ただ、せっかく素のメルさんにお目にかかれるかもしれない機会が巡ってきたのだ、不謹慎だとは思うけれど、予想だってしてみたいし、できることなら、お目にかかりたいではないか。
お友だちだからこそ……あたしはそう思っているのだけれど、の、純粋なる好奇心である。
それから、きっかり30分後。
キッチンの片付けを終え、部屋のあちらこちらに付いているチョコを落としていると。
「野宮、例のコーヒー。ホットで」
と言いながら、待望のメルさんが戻ってきた。
「すでにご用意しております」と返事をする野宮さんの視線の先をたどって見てみると、そこには、バスタオルを腰に巻いただけの麗しい青年、つまりはメルさんが立っていて、あたしは目のやり場に困り果て、とっさに下を向く。


