葉司父は笑顔で帰っていったし、葉司も嬉しそうに泣いていたし、そこは、あたしでも何か役に立てたのだ、とちょっと自負してもいいんじゃないかな、と思ったりしている。

そう、最後に付け加える。


手料理を振る舞うハプニングがあったことや、取りに行き忘れていた荷物の今後について話したことは、まあ、言わなくてもいいだろう。

立場をわきまえなさい!と雷が落ちてきたり、マコは本当にそれでいいの……? と、余計な心配をかけてしまうのが目に見えている。

葉司とあたしの間で、これでいい、としてやったことなのだ、奈々には黙っておこうと思う。


「ごめん奈々、もうすぐ駅に着きそう」

『じゃあ、詳しいことは明日ね』

「うん」


そうして、ありがとう、と最後に礼を言い、あたしが大学を飛び出していってからずっと心配で、おそらく携帯を常に携帯して連絡を待っていただろう奈々との通話を終える。

改札を通ると、ちょうど電車がホームに入ってきて、それに揺られ、部屋まで帰った。


「かんぱーい」


祝杯、というか、ちょっと飲みたい気分になったあたしは、お風呂上がりに缶チューハイを開け、テレビに向かって腕を突き出す。