「いや、謝んなくて大丈夫。マコの反応は当たり前だと思うよ。ありがとう、読んでくれて」

「うん」


それきり愛菜は口を閉ざしてしまって、そうしているうちに、指名が入ったとかでお店のほうに呼ばれていってしまった。

聞きたいことは山ほどあって、一番は「どうしてオトコの娘に目覚めたのか」なのだけれど、あたしも何も言葉が出てこなくて、肝心なことは一つも聞けずじまいのままだった。


帰り際。

メルさんに、助けてもらったお礼や話を聞いてもらったお礼、その他もろもろのお礼を伝えたとき、こんな声が耳に入った。


「愛菜ちゃん、今日はなんだか元気がないね」


愛菜を指名したお客さんなのだろう。

その声で思わずそっちを振り向きそうになったけれど、愛菜の顔を見たら泣いてしまうような気がして、そのまま店をあとにした。


部屋までは、どうやって帰ったか分からない。

ただ、よくよく気をつけて見ると、街を歩く女の子たちの中に“オトコの娘"もちらほらと混じっていて、携帯で読んだことは本当だったのだという現実を目の当たりにした。


「もぉ~、どうしたらいいのー……」


いくら考えても、答えは出てこなかった。