なーんだ、そんなことか……。
ものすごく神妙な顔つきなものだから、てっきりナイーブな部分の話かと思ったのだけれど、そんなことはなかったらしい。
そんなの、簡単じゃないか。
「今日、持って帰れるものは持って帰るよ。残った荷物は、ちょくちょく取りに行ってもいいし、葉司の都合のいいときに大学まで持ってきてもらってもいいし、そこは、任せる。面倒なら処分してもらっても大丈夫だし」
「そっか」
「うん」
そう言い、あたしは頷く。
だいたいにして、別れたのに荷物をそのままにしていたあたしが悪いのだ、それが口もとの傷口にも通じているわけで、処分したい、ということならば、それもまた当たり前だ。
葉司の都合にいくらでも合わせよう。
「じゃあ、どうするか決めたら、連絡するよ」
「うん。そうしてもらえると助かる」
それからは、特に何もなく食事は進み、洗い物まで済ませると、夜8時半を回っていた。
すっかり長居をしてしまったのだけれど、さすがにもう帰らなければ、と腰を上げる。
葉司に手料理を振る舞ったのは、ちょっとしたハプニングだったのだ、これ以上のハプニングがあれば……まあ、ないと思うけれど、葉司にもあたしにも、これからのことにきっとよろしくない影響が出てしまうだろうと思う。


