「分かってるって。いいから食べよ」
「……じゃあ、いただきます」
「いただきまーす!」
本当に分かっているのだろうか、葉司の奴。
もしもこの流れで「マコの荷物も揃ってるし、今日は泊まってって」なんてお願いされてしまったら、断りきる自信がないぞ、あたし。
どうしてくれるんだ。
「うおぉっ……!」
「どうしたの、葉司っ」
「いや、親父に殴られたところの傷がパックリ割れたみたいで。2週間経って、そろそろいいかなと思って大口開けたら、まだ治りが浅かったみたいだ。おお、けっこうしみる……っ!」
けれど、葉司は食べはじめてすぐにうなり声を上げ、どうしたのかと聞いてみると、葉司父が残していった負の遺産が痛むという。
そういえば、純平も『ほっぺたがかなり腫れててさ』と言っていたし、今まで特に触れてはこなかったけれど、葉司の顔を見たとき、まだアザが濃く残っていて痛々しい……と、葉司父の右ストレートの威力に度肝を抜かれた。
「もう。がっつくからじゃん。ちょっと見せてみて。今、よく効く薬塗ってあげるから」
そう言い、あたしはバッグから化粧ポーチを取り出し、中から軟膏を出して蓋を開ける。


