『私は自分の理想を押しつけすぎた。おそらく私は、それを誰かに正してほしかったのだよ。心では分かっていても、間違いを認めるのが怖かったことも、お嬢さんには告白しよう』
そう言ってくれたのに、あたしの大バカっ!!
けれど葉司は、またもや、のん気に言う。
「いいよ、そんなの、大したことじゃない」
「でも……っ!」
「それを知っても、親父には何も得がないよ。それに、マコに対する印象が変わるとも思えないし、元カノだろうが何だろうが、親父はマコのことを気に入ってる。だから、いいんだよ。親父も俺も、マコに救われたんだし」
「……なんで気に入ってるって分かるのよ」
やけに自信ありげに言い切ったけれど、本当は違っていたらどうするのさ。
なんだか納得がいかなくて、唇をとがらせ、ちょっと拗ねた感じで聞いてしまう。
「んー? 愛だよ、愛」
「……あらま。どこかで聞いたような台詞」
「マコの受け売りだからね」
すると葉司は、ニシシシと笑ってそう言い、続けて「マコが気にすることじゃないよ」と。
葉司父が一筆したためた『親父の愛は深し!!』の紙を、ひらひらと振ってみせた。
葉司、息子の愛も深し!! とか、言いたい……?


