そうなのだ、あたしは葉司に嘘を言ったのだ。
こんなに素敵な愛の言葉、あたしなどの口からでは、とてもじゃないが言えやしない。
だって、さっきまで……いや、今も少しなのだけれど、自分から葉司の頭を胸に引き寄せておいて、エッチだな、と思っていたのだ。
いくら事前に知っていたとしても、そんな人の口から美しい親子愛の証である『親父の愛は深し!!』なんて台詞、言えないじゃないか。
それはそうと、小さく嗚咽をもらして泣きはじめた葉司の頭を優しく撫で、あたしは言う。
湿っぽいのはどうも苦手だし、あたしももらい泣きしちゃっているけれど、あたしがいつまでも泣いていたら、葉司だって笑えない。
「ね? 葉司は愛されてるんだよ。どんな葉司も葉司だ、って、全部を受け入れるつもりで、そう書いたんだと思う。お父さん、愛情表現が極端に下手くそなだけよ。男同士だし、普段が激烈だから、照れてるって部分も大きいとは思うけど、ほんと、不器用な人よ」
「お。言うじゃん、マコ」
「ふふ。まあね」
でも、本当にそう思う。
不器用だからこそ、今までずっと、愛情のかけ方を模索していたんだと思うし、ひとたび気持ちを伝えようとすれば、愛の言葉もストレートだったのだろうとあたしは思う。


