「おおっ、もうこんな時間か!いや、すっかり話し込んでしまって申し訳ない。息子のことも聞けたし、私はそろそろ田舎に帰るよ」

「え、葉司に会って……て、うぎゃっ!!」


涙を拭きながら、葉司父可愛い!と思っていると、その葉司父は唐突に制服を脱ぎだし、本来の服であろうスーツに袖を通しはじめた。

壁時計をせわしなく見上げ、本当に時間がなさそうに身支度を整えはじめているけれど、あたしは声を大にして言いたい。

ここに女の子がいますってば!忘れないで!

思わず叫んでしまったではないかっ。


「いいではないか。息子もだいたい、こんな体をしている。私より見慣れているだろうに、今さら恥じらわないでくれたまえ」

「そこなの!?」


……分からない。

分からないぞ、葉司父の感覚が。

けれど、新幹線がバスか、何で帰るか分からないのだけれど、時間が押し迫っているため、仕方なく、あたしが葉司父から体を背け、着替えが終わるのを待つことにした。

絶対逆だよなこれ、と妙な気分になりつつ、念のために目もつぶって、待つこと数分。


「最後にお嬢さんに頼みがあるのだが」


どうやら着替えが終わったらしい葉司父にそう言われ、あたしは大丈夫だろうか……と半信半疑ながら、とりあえず薄目を開けた。