「ああ、お嬢さんの言う通りだ、私は自分の理想を押しつけすぎた。おそらく私は、それを誰かに正してほしかったのだよ。心では分かっていても、間違いを認めるのが怖かったことも、お嬢さんには告白しよう。いや、お嬢さんのような彼女がいてくれて、ほっとしたよ」
「ごめんなさい、あたし……」
「構わぬ。息子を殴ってしまったのは、まだまだ半人前なのに彼女であるお嬢さんを守れるものか、と激高してしまったからなのだが、それも間違いだった。男は何も、女を守るだけではないのだよな。こんなにもお嬢さんに思われ、守られている息子がいるのだから」
「お父さん……」
格好は、強面のおじさんが女子高生の制服を着て女装をしている、という、なかなかシュールな図だけれど、その奥に見えた本当の姿の葉司父は、ただの息子思いの優しい父だ。
葉司との距離の取り方に四苦八苦していたり、気持ちを伝えるのがド下手だったり、口より先に手が出る昔気質なところもあるけれど、本当は誰よりも、葉司を思っている。
正直、あたしは、息子をたぶらかしおって!と言われることを覚悟していたのだけれど、おそらく連絡は取り合っていないだろう葉司の近況を、古刀市にかこつけて見に来たのだと思う。
可愛い父だ、こんにゃろー。