「そうか……。それなら息子は、お嬢さんや、息子を好いてくれる仲間に囲まれて楽しくやっていたのだな。せっかくの楽しい時間を、どうやら私は台無しにしてしまったようだ」
「いえ、そんなことは……!」
思わず身を乗り出してそう言うと、葉司父はふるふると力なく首を振り、顔にかかって邪魔だったのだろう、カツラをぺいっと脱ぎ捨てた。
彼女だったあたしでさえ、葉司の“オトコの娘”にはただならぬ衝撃を受け、これまでにもいろいろとあったものの、今もまだなお、全てにおいて“分からない”状態が続いているのだ。
偶然見つけた制服を思わず着てしまった、というノリの良さには、なんと言っていいか分からないのだけれど、一気に聞かされた葉司父の心境は、あたしなどでは推し量れない。
「ありがとう、お嬢さん。いやしかし、正直、私は息子に嫌われているのだよ。どこまで聞いているかは分からないけれど、立派な男になってほしいと思うあまり、厳しくしすぎてしまったのだ。この溝は、もう埋められまい」
「そんな……」
「ダメだな、私は。久しぶりに会って嬉しいのに殴ってしまったり、この2週間、寝食を共にしても、優しい言葉など、ひとつもかけられなんだ。これでは嫌われて当たり前だ。ははは」
「……」


