それからすぐに「“オトコの娘”というのは」とあたしは続け、バッグから紙とペンを出してそれを書いて見せ、ワキペデュアで得た知識を、覚えている限り正確に葉司父に伝えた。
けれど、葉司父の顔はみるみるうちに苦悶の表情に変わっていってしまい、オトコの娘カフェでの仕事ぶりを話す段階になって、あたしは思わず、言葉を詰まらせてしまう。
「どうしたんだい、続けてくれたまえ」
「でも、その顔……」
「構わぬ。お嬢さんに息子のことを聞くのが私の目的なのだ、覚悟はできている」
「はい。……じゃあ、続けます」
葉司父にそう促され、再び話を続けたものの、やはり顔は苦悶の表情そのもので、お客さんにもスタッフの娘たちにも愛されている、というところまでで、いったん話を切り上げた。
竹山という“そっち方面”の客に猛烈アプローチをされており、葉司自身も、男とオトコの娘の境目が曖昧になっていて、今、それを一生懸命に悩んだり考えたりしていることは、あたしの口から話すべきことではないように思える。
葉司父の表情に心が痛んだのも確かなのだけれど、こればっかりは、父親のことをどう思っていようと、葉司の口から伝えることだ。


