「いや、実にすまない。私には娘も2人いるんだが、2人とも、わりとこういうものが好きなのでね、いつもの調子で勧めてしまった」
「……そう、なんですか」
「ぶははは!」
「あは、あははは……」
うん、なんだか、葉司が家を出たかった理由も分かってきた気がする、あたし。
詳しくは知らないのだけれど、日本刀や狩猟なんかに使う銃を所持するためには、確か届けを出さなければならなくて、所持しておくだけでも様々な制約があったように記憶している。
そういう、普通の家庭にはちょっとないようなものが家にあり、自分以外の家族みんなが好きだとなると、それだけで怖さが倍増だ。
「そうだ。ひとつ、お嬢さんに正直に答えてもらいたいことがあるのだが……」
すると、今までの豪快さがすっと消えた葉司父は、そう言って、とても真面目な顔になった。
日本刀の話にだいぶ時間を割いてしまったけれど、葉司父がここに留まっていた別の目的は、おそらく、あたしに会い、葉司の趣味、すなわち“オトコの娘”のことを聞くためだ。
だって、葉司の服を着ているんだもの。
こればかりは、疑いようがない。
「はい。その女子高生の制服のことですよね。どこまで答えられるか分かりませんけど、あたしに言える範囲でしたらお答えします」


