オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*

 
なんだか物騒な言葉だけれど、古刀市というのは、もしかして、古い刀を売り買いする催し物のことでしょうかね、葉司父。

そうしておずおずと尋ねると、葉司父は部屋の隅に立てかけてあった紫の細長い包みを持ってきて、それを解きながら自慢げに言った。


「ああ、日本刀が趣味でね、今回は何かいい小太刀はないかと上京したのだけれど、最終日にならないと一番の目玉は出してこないないんだよ、あの連中。おかげで2週間もバカ息子と一緒にいるハメになってしまった。ぶははは」

「……」

「どれ、お嬢さんも持ってみるがよい」

「とんでもない!遠慮させてくださいっ!」


ぶははは、と笑った挙げ句、小太刀を触ってみるかと鞘から抜いて差し出してくるとは、なんて破天荒なお父さんなんだ、まったく。

「そうか……」と、たいそうしょんぼりしているようだけれど、マジで怖いし、それ。


葉司の妹さん2人は、刀が趣味の父親のことをどう思っているかは分からない。

けれど、産まれて3日の超新生児の頃から厳しくしつけられてきた葉司には、この趣味は、普段の厳しさに相まり、父親に対する苦手意識を加速させる結果だったのだろうと思う。

重ねるけれど、マジで怖いんだもの、それ。