本当にほっとしたような顔で笑う純平に「いいよ、いいよ」と言いながら、あたしは密かに奈々と目を見合わせ、うん、と頷く。
あたしが今、何を考えているかを感じ取ったらしい奈々もまた、無言で頷き返してくれ、ここでようやく、少しだけ穏やかな空気が流れる。
純平やあたしとは違い、葉司とそこまで密な関係を築いてきたというわけではない奈々も、葉司父の激烈ぶりに葉司が心配なのだ。
奈々の目が、行け、と言っている。
「奈々、純平、あたし、今日は帰るわ」
その目に後押しをされたあたしは、ガタンと音を鳴らして席を立つと、お弁当や荷物を手短かにまとめ、一直線に学食を出て、構内を駆け抜け、通い慣れた葉司の部屋へと進路をとる。
一刻も早く葉司父に会いに行かなければ。
その気持ちだけで、あたしは走る走る。
「そうだ、純平にメール……っ!」
駅に着き、ちょうどホームに入ってきた電車に飛び乗った瞬間、葉司父に会いに行くことは本人には秘密にしてほしい、と言い忘れていたことに気づいたあたしは、バッグの中をあさり、その旨をメールしようと携帯を取り出した。
けれど、携帯にはすでにメール受信のランプが点滅しており、開くと、奈々からメールが。


