そう言ったきり、あたしは絶句する。

すっかり忘れていたけれど、半同棲状態になっていた葉司の部屋には、こつこつと持ち込んだあたしの荷物がたんまりと残ったままだった。

それを運悪く、上京した葉司父に見つかってしまったと、そういうことのようだ。


「でな、続きなんだけど」

「……う、うん」

「葉司も悪いんだけど、まことの荷物をずっとそのままにしてたらしいんだ。確か前に、片づけらんない、って言ってたかな。葉司の父ちゃんって激烈だから、女物の荷物を見たとたん、右ストレートが飛んできたらしい」

「……うわ」

「ほっぺたがかなり腫れててさ。それで今、オトコの娘カフェも、ファミレスのバイトも休んでる。大学だけは毎日来てるけど、ダメだ。あんな葉司、もう見てらんない……」

「……」

「……」


ふるふると力なく頭を振り、そう声を詰まらせた純平がひどく弱々しく見えて、奈々とあたしはお互いに顔を見合わせ、けれど何も言えず、しばらく言葉を失ってしまった。

葉司父といえば、以前、メルさんから話は聞いて知っていたのだけれど、さっき純平が言ったように、かなり激烈な父親なそうなのだ。