そのときは特設ステージを設けており、黒山の人だかりを作っていた広場だけれど、今は本当に静かなもので、学生の姿はない。
今日は特に冷え込んでいるから、休講で思わず空いた時間や、選択している講義が飛び飛びなために時間を潰している学生も、みんな、屋内のぬくぬくとした場所にいるのだろう。
そこにぽつんと立っていると、なかなかどうして、目に涙が溜まってくるから不思議だ。
「ああ、もう、全然分かんない!」
出てきた鼻水をズビーッとすすり、涙も腕で無理やり拭くと、あたしはそう、かんしゃくを起こしながら、その場で地団駄を踏む。
待つと言った手前、気をもんでも仕方のないことなのかもしれないけれど、葉司がどこに向かっているのかも分からないし、あたしの気持ちも、一体どこに向かっているのやら……。
まったくもって、分からない。
「ぶえぇぇぇっくしょい!」
そのうち、お約束の女の子らしからぬ大きなくしゃみも出てきて、ついでに悪寒も走り。
「……そろそろ戻ってもいい頃だろうかね」
なんとなく戻りにくい雰囲気ではあるものの、いかんせん、マジで寒いもので、外の寒さと全身に走った悪寒に負けたあたしは、奈々たちのもとへ引き返すことにしたのだった。


