「ちぇっ。竹山のこと、あんなに嫌ってたのになんなのメルさん。そんなさ、急にいろいろ言われても、すぐには答えなんて出せないよ」
そう言い、あたしはいじける。
絶対に可愛くないだろうけれど、いじけたい。
メルさんはあくまで中立な立場である、というのは、何度も“厳密に言うとあたしは他人だ”と言われたので、渋々ながら理解しよう。
ただ、メルさんもたいがい人が悪いというもので、葉司とは別れているわけだし、彼女でもなんでもないあたしがとやかく言えない、と思うのは当たり前のことだと思うのだ。
それを逆手に取るなんて……。
やっぱり、メルさん、性格悪っ。
「何を言っているのよ。答えは簡単じゃない。愛菜を竹山に取られても構わないか、そうじゃないか、ってことでしょう? それは、まことちゃんが一番よく分かっているはずよ」
「それは……」
けれどメルさんはそう言い、あたしはうっ……と言葉に詰まったまま、言い返せない。
それからずいぶんと長い間、お互いに黙ったままだったあたしたちは、コーヒーがなくなったのを合図にしたように目を合わせた。
「今の話は、いったん預からせてください」
「……ええ」


