「何を言っているの、まことちゃん。あたしはもともと、誰の味方でもないわよ?」
「そんなぁっ……!」
けれど、メルさんはきょとんとした顔でそう言い、あたしは思わず語気を荒げてしまう。
だったら、その楽しそうな顔は一体なんだというのだろうか、メルさんは、葉司が竹山とつき合ってもいいと思っていたりするわけ?
それに、葉司のことを気をつけて見ておく、と言ってくれたのは、あの頃、別れたばかりだったあたしを気遣っての言葉で、実際は本当に“見ている”だけで、愛菜がどんな扉を開けようともあたしは止めないわよ、と。
そういう“見ておく”だったのだろうか。
「ひどいよ、メルさんっ!」
「何もひどくないわよ。あたしは、まことちゃんが何が何でも愛菜を取り戻したいって言うなら、協力を惜しまないつもりでいるわ。さっきも言ったけれど、厳密にはあたしは他人なの。まことちゃんが動かないことには、あたしは何もしないし、黙って見守るだけよ」
「……っ」
なんていうことだ。
崖から突き落とされた気分である。
じゃあ、メルさんの楽しそうな顔は、竹山の話を聞いたあたしがどういう行動に出るかを見たいがための顔だった、ということか。
メルさん、性格悪っ。


