竹山、といえば……。
これも葉司の様子をこっそり見に行ったときのことなのだけれど、オトコの娘カフェと知りながら、葉司をまるで本物の女の子のように扱っていた、そっち方面の人、である。
街中で見かけたとしたら、オシャレ男子にしか見えないようなファッションをしていて、年齢もあたしたちと近そうな印象だった。
しかし、アプローチの仕方が自己中心的で、例えば、個人的なスキンシップは『ねこみみ。』では禁止されているのにも関わらず、堂々と葉司の手を取り、その甲にキスをしようとしていた、というような、厄介なお客さんなのだ。
葉司への愛が過剰、というよりは異常で、あたしは、愛菜の身のみならず、葉司の身も危ないのではないかと案じたのをよく覚えている。
その竹山が、一体どうしたのだろう。
確か、メルさんは竹山を良く思っておらず、呪いの呪文をかけあっているかのようなバトルを繰り広げていた、と記憶しているのだけれど、竹山の話題だというのに楽しそうな顔というのは、不自然な感じが……しないでも、ない。
そうして竹山のことを思い出し、思わず顔をしかめていると、メルさんは言う。
「とうとう動き出したわよ、奴」


