けれど、そうして先輩の後ろを歩くものの、降り立った駅は、オタクの聖地・アキバ原。
果たして、アキバ原に美味しいケーキ屋さんが店を構えていたりするものだろうか。
普段、アキバ原にはあまり行かないもので、偏った知識で判断しているだけなのかもしれないけれど、なんといってもここは、葉司が“オトコの娘"として働いている『オトコの娘カフェ ねこみみ。』がある場所だったりするのだ。
まさか先輩がそのことを知っているとは考えにくいので、単に、あたしが知らないだけで本当にケーキ屋さんがあるんだなぁ、と、あまり深読みしすぎないほうがいいだろうと思う。
それにしても、謀ったようにアキバ原だな。
早くここから離れたい……。
「まことちゃん、ごめん」
「は!? な、何が!?」
「うーん、もうちょっと歩くよ」
「はあ……」
加えて、さっきから、必要以上に周りをキョロキョロと見回し、何かブツブツ言っている先輩の行動が怪しすぎるのは、否めない。
もしかして迷ってます!?
ねぇ、迷ってますの!?
そうしているうちにアキバ原の街はどんどん遠くなっていき、代わりに見えてきたのは、クリスマス色とは一線を画す、怪しいネオンの光。