のだけれど……。


「ちょっ、先輩!?」

「んー?」

「電車、間違えて乗っちゃったんじゃない!? この電車じゃ逆方向だよ、乗らなきゃいけなかったの、反対側のホームからじゃん!!」


と、軽く5駅は過ぎてから、勘弁しろよ茨城このやろー!!、的な重大なミスに気づいたのだ。

しかも、腹が立つことに、先輩はあたしが慌てふためきだしてものん気なもので、窓の外を流れゆく街並みを眺めながら「そうだねぇ」と、ちっとも慌てる様子がない。


「せっかくだから、ちょっと寄り道していこうか、まことちゃん。時間、まだいいでしょ?」

「は!? 何言っちゃってんの!?」

「まあまあ。俺、遅くまで開いてるケーキ屋さん、知ってんだぁ。ホテル並みに美味よ? 本当は食べたいんでしょ、ケーキ」

「……、……う。……マジで美味いんだな?」

「もちろん」


さらにはそう丸め込まれ、それからも電車を乗り換えることなく、先輩が「ここで降りよう」と席を立つまで、あたしも隣に座っていた。

今度はお持ち帰りできるケーキだし、多めに買って、明日、朝イチで奈々に届けてあげよう、などと、改札を出て、先を歩いていく先輩について行きながら、あたしは思う。

そうだ、一緒にプレゼントも渡そうぞ。