空きっ腹にアルコール、という魔の方程式も相まって、あたしはもう、先輩に毒づく元気も気力もないくらいにグロッキーだ。

そこへさらに、ボーイさんが「お口直しに」と食後のコーヒーと小さくカットされたケーキをキャスターで運んできたものだから。


「……っ!!」


ケーキを見ただけで、なんとかこらえていた気持ち悪さが胃の奥からふつふつを湧き上がり、危うく醜態をさらしてしまうところだった。

ボーイさんはにこやかに一礼してケーキを置いていったけれど、彼だって本当は気づいていないはずはない、あたしのこの状況を。

ああ、猛烈に恥ずかしい……。


「まことちゃんはもう食べられそうにないみたいだから、俺が一通り、味見するね」


そう言ってケーキを本当に一通り味見していく先輩が、このときばかりは鬼に見えた。

それはおそらく、いつもぞんざいな扱いを受けている先輩の、ささやかな反抗なのだ。


ちくしょー、とんだクリスマスだ。

けれど、気持ち悪くなったのは全てあたしのせいなのだから、もう何も言うまい。

ああ、もう、これ見よがしにちびちびとケーキを食べおってからに!そんなもの、一口で食べてしまえ!飲み込んでしまえっ!!

心の中で、あたしはそう、めいいっぱい毒づいたのだった。……ぐすん。