あたしのそばまで来ると、葉司は早口でそう言い、中身まで出た玄関に転がるあたしのバッグを拾って、手に持たせてくれた。

葉司は、あたしの手に収まったバッグを横目で確認すると、本当に急いだ様子で靴を履き、そのまま部屋を出ていこうとする。


「……ちょっ、葉司、どこ行くの?」


その背中を必死で呼び止める。

まさか女子高生の格好で出歩くの……?

いや、あたし以上にすごく女の子なんだもの、絶対にバレたりするはずはないのだけれど、問題なのは、その行き先だ。


お見合いさせられそうな知り合いの線は否定していたし、そもそも、女子高生の格好で相手のご両親に会うなんてさすがにないだろう。

だったらどこへ?

好奇心とか、怖いもの見たさとか、そういう気持ちはないけれど、葉司の“彼女”として、止められるものなら止めたいと思った。

すると。


「本当に時間がないの。話なら歩きながらするから、とりあえずマコも一緒に行こう!」

「……え」

「行くよっ!!」

「ええぇっ、ちょっ、まっ、きゃーっ!!」


あれよあれよという間に手を掴まれ、部屋を引っ張り出され、そのまま全力で走らされる。