そうしてベンチを立ち、歩きはじめる。
気づけば、ふと見上げた空はすっかり暗くなっていて、辺りのイルミネーションは、昼間よりより一層、チカチカと眩しく光って見える。
ずっと外にいたから体感的にはそれほど感じなかったのだけれど、もうそんな時間か、と意識しはじめれば、吐く息がとたんに白く見えてきて、急に寒さも感じはじめてきた。
「ぶえぇぇっくしょい!」
くしゃみも一発、出るってものだ。
盛大かつ女の子らしからぬ、このあたしのくしゃみには、さすがの先輩も「すげーな……」と一言もらしたきり、それきりだった。
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「うおぉ、ここかぁ!」
「そうだよ、まことちゃん。やっと七面鳥にお目にかかれるね!よし、行こうか!」
「おうよ!」
電車を何本か乗り継ぎ着いたのは、佇まいだけでもとても高級感のあるホテルだった。
以前、メルさんのお屋敷におじゃましたことがあったけれど、ホテルの中も、そのお屋敷に匹敵するほどの豪華さで、最上階だというレストランまでエレベーターで移動する間も、あたしの口からは「おぉ……!」しか出てこない。


