けれど、覚悟はしていたものの、先輩と過ごす1日がこんなにも疲れるものだとは、正直なところ、想定の域を越えていて、まだ会って2時間足らずだというのに、猛烈に後悔している。

……まあ、夜にディナーが待っているので、服装はそれなりにまとめて来ているのがせめてもの救いだ、と考えられなくもない。

ただ、だ。


「いい加減にしてくださいよ、先輩っ!! 今すぐ夜になる魔法の時計なんてあるわけないし、魔法のお店もあるわけないでしょ!? どこのファンタジーの世界ですかっ!!」

「えっ!! そそ、そうなの!? でもここ、日本の首都のトーキョーだよ? もうちょっと探せば見つかるかもしれなくない?」

「んなわけあるかっ!!」

「ふぎゃ!」


いくらそれなりの格好をしていても、中身がバカで出来ている先輩のため、街行く人たちの注目を集めないわけはなく、名前を呼ばれるたびに恥ずかしすぎる思いをしているあたしは、一刻も早くやめさせようと、先輩の顔目がけて持っていたバッグをぶん投げた。

するとそれは先輩の顔面に見事にクリーンヒットし、先輩はその場にしゃがみ込んで悶絶。

あたしはそんな先輩を無理やり立たせ、バッグを拾うと、これ以上注目を集めてなるものか、と適当に目に入ったカフェへ連れ込んだ。